ここでは業務委託で個人事業主やフリーランスが陥りがちの会社とのトラブル事例を紹介します。また、トラブルに対する対処法や、スムーズに解決できる相談先も併せてご案内します。
個人事業主/フリーランスの業務委託契約は委任契約と請負契約がある
個人事業主(フリーランス)は取引先の企業と契約を交わすとき、一般的に業務委託契約が用いられます。この業務委託契約は、法的には請負契約または委任契約・準委任契約のいずれかに分類されます。両者の違いを簡単に説明すると、請負契約は成果物や仕事の完成に対して報酬が発生するのに対し、委任契約・準委任契約では業務遂行そのもの(労働や作業プロセス)に対して報酬が発生します。
具体例として、Webサイトの作成業務を依頼された場合を考えると、請負契約では完成品(Webサイト)を納品することを条件に報酬が支払われます。一方で、委任契約・準委任契約では、業務遂行や労働の対価として報酬が支払われるため、完成や品質の有無にかかわらず、時間や工数に基づいて報酬が発生します。
個人事業主の業務委託トラブル事例:偽装請負は重大な違法行為
個人事業主が業務委託で会社と取引する際、よくありがちのトラブルの1つが「偽装請負」です。取引先の職場で勤務する人が陥りやすい典型的なトラブルで、「請負契約なのに残業を強要してくる」、「他の従業員と同じ勤務時間を強いられて、朝礼の出席も義務と言われた」このように請負契約にも関わらず社員と同じ扱いをされている場合は偽装請負の疑いがあります。
業務委託なのに厳しい業務上の束縛があった場合は偽装請負を指摘できる
個人事業主の中には、会社と業務委託契約を交わす際に「月曜~金曜の9時~17時勤務」などと、正社員と変わらない時間の束縛があるケースも見受けられます。このような場面では、何か金銭的なトラブルが発生した際、偽装請負を指摘することで相手がひるむだけでなく、残業代の請求や有給休暇を取得できる可能性があります。
個人事業主の業務委託トラブル事例:取引先企業から損害賠償請求される
業務委託契約を交わした取引先とトラブルになり、先方を怒らせてしまったため損害賠償請求される事態に発展する事例もあります。個人事業主は労働法で保護された労働者ではないため、場合により取引先は法的に損害賠償を請求することも可能となります。
そのため、一見すると理不尽な請求であっても、支払いを無視し続けると、いつの間にか裁判になっているケースもあります。企業から損害賠償請求されたときは一刻も早い解決が望ましいため、素人判断せずに、まずは法律事務所に相談するのがおすすめです。
企業から損害賠償請求された後の流れ:個人事業主は取り返しつかなくなる前に解決を
業務委託の契約解除時に個人事業主が企業から口頭やメールで損害賠償請求された場合、企業側の本気度にもよりますが、基本的に無視するのはリスクがあります。
- 企業から内容証明の通知が送られてくる
- 裁判所から答弁書が送られてくる
- 口頭弁論の通知が送られてくる
- 審理
上記の流れを無視し、口頭弁論も出頭しない場合、企業側の意見がそのまま審理に反映され、損害賠償の支払い義務を負うことになる可能性もあります。そのため、電話やメールで損害賠償の支払いを求められた最初の段階で法律事務所に相談すべきと言えます。
個人事業主の業務委託トラブル事例:途中契約解除による違約金を請求される
個人事業主と企業は業務委託契約を交わしますが、これは通常6か月から1年の契約期間となります。お互いの合意がない限り、契約期間内の途中解除は一般的に認められず、場合によっては契約書に記載されている途中契約解除項目に沿って違約金の支払いなどが発生するケースがあります。
ただし、上記で解説した損害賠償と併せ、企業から違約金の支払いを求められても交渉の余地は当然あります。特に企業との取引になると、違約金の類も高額になりがちです。ただし、業務委託が中長期契約の場合、契約期間内に途中解除を想定するのは取引先企業も同様です。そのため、正当な事由があれば途中契約解除が可能な「任意解約規定」が契約書に盛り込まれていることが多いので、まずはそちらを確認するのがいいでしょう。
合理的な計算に基づかない高額な違約金は無効にできる可能性が高い!
会社によっては違約金の支払いを個人事業主に求めるとき、実際に会社が被った損失以上の金額を請求するところも少なくありません。例えば個人事業主の途中契約解除により5万円の損失を会社が被ったにも関わらず、実際に個人事業主には10万円を請求する、このような合理的ではない違約金に関しては無効にすることができます。
法及び専門知識が必要となるので、こちらも違約金を請求された段階で早いうちに法律事務所に相談するようにしてください。
会社との業務委託で個人事業主がトラブル遭遇!まずは「契約書」を確認しよう
会社との業務委託契約でトラブルに見舞われた個人事業主・フリーランスが最初にやるべきことは、「契約書の確認」です。契約書が手元になくとも、昨今はメールでのやり取りが普通なので、履歴を遡ってダウンロードできるはずです。企業によっては個人事業主やフリーランスと業務委託契約を交わすアウトソーシングに慣れたところもありますが、それも含めて完璧な契約書というのは滅多に存在しません。中小企業であれば、余程の機密情報を扱わない限り、個人事業主との業務委託契約レベルでリーガルチェックをすることはありません。
また、多くの契約書には「違約金を支払う」旨の記載はあっても、具体的にどのように金額を算出するのか、また支払い金額の上限など、細かな取り決めは書かれていないことがほとんどです。そのため、契約解除後に取引先から高額な違約金の請求が来ても、毅然とした態度で対応することで退けることも十分可能となります。
個人事業主が自分で解決しようとするのは危険
法知識の浅い個人事業主が「自分は悪くない」、「相手企業が理不尽なことを言っている」として自力で交渉や解決を図るのは高いリスクをはらむことになります。特に中規模以上の会社であれば、企業法務や弁護士と顧問契約しているところも多いです。
どこまで進んでしまうと裁判に発展するのか、引き返せなくなるのか、無効か減額のどちらを訴えるか、などは素人では判断がつきません。行き詰ったときに弁護士に依頼すると高額な費用が掛かってしまいますが、最初の段階で相談すれば、それほどの費用は掛かりません。
個人事業主の業務委託で報酬支払のトラブルが発生した際の解決法
業務委託契約において報酬支払が遅れる、または未払いになるケースは少なくありません。これは、取引先企業の経済的な事情や、契約書における支払条件が曖昧であることが原因として挙げられます。未回収リスクを最小限に抑えるためには、契約書の明確化が重要です。
個人事業主が業務委託でトラブルを防ぐための事前対策
- 明確な契約書の締結
報酬支払や支払い期日などに関する詳細な条件を記載することで誤解を防ぐだけでなく、裁判に発展したときに自分の立場が有利となります。 - 報酬支払条件の分割設定
報酬が高額かつ中長期案件となるエンジニアでは、業務進捗に応じて報酬を分割払いするのが普通です。未払いリスクや音信不通のトラブルなどを最小限に軽減できます。
個人事業主の業務委託トラブル発生後の適切な対応策
- 取引先との話し合い
報酬の遅延や未払いについて、冷静に取引先と協議します。 - 内容証明郵便での請求
報酬の未払いが続く場合、内容証明郵便を活用して正式な請求を行います。内容証明は裁判時の証拠にもなるので、訴訟を起こす前に必ず送付するようにしてください。 - 弁護士の助言を得る
弁護士・法務専門家に相談することで、法的措置を視野に入れた対応が可能です。正社員であれば労働基準監督署なども視野に入れることができますが、個人事業主は労働者ではないため、一般の労働法が適用されません。
個人事業主は業務委託契約でトラブルになりやすい。まずは弁護士事務所に相談を
個人事業主やフリーランスが企業と取引すると、立場はどうしても弱くなってしまいます。企業の理不尽な要求に心身が疲弊してしまい、「もう契約解除したい」と考えに至ることもあるでしょう。しかし、個人事業主は法律で定められた労働者ではないため、労働法が原則適用されません。
会社から違約金や損害賠償の請求が来た場合、自力解決が困難だと泣き寝入りして言い値を支払ってしまう人もいます。しかし、トラブルが発生してすぐに弁護士に相談することで、被害を最小限に抑えることが可能です。
弁護士法人みやびは業務委託契約のトラブルに強い法律事務所
弁護士法人みやびは全国から依頼を請け負っている労働問題専門の法律事務所です。新型コロナ以降は多様な働き方の増加に伴い、個人事業主やフリーランスも増えています。弁護士法人みやびでは、業務委託契約の個人事業主からの問い合わせを大変多くいただいており、これまで、契約満了前の途中解除や損害賠償・違約金請求の交渉及び支払いを退けるといった実績が豊富にあります。
現在業務委託契約先の企業とトラブルを抱えている個人事業主は、まずはご相談ください。
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